GREETING CD

こんばんは。

「GREETING CD」の歌詞の話はこれで最後です。
読んで下さったみなさん本当にありがとう!

“「うん」と云う日 ”

知人の遺品整理でもらった金魚鉢に故人を呼び戻すため、お盆の祭りの金魚すくいに赴く一組の夫婦の話。

この夫婦の役割でいうと、あきらかに夫がつっこみ役なのだけど、話としてはつっこみ役のほうが暴走して変な方向に進んでいく、という展開にしたくてしたくてこうなりました。

「ダンデライオン」、「さくらの花が~」の次にこの曲の作詞をしたので、
その二曲とは異なる二人の時間の奥行き(単純に二人が共にしてきた時間の長さ)を出したくて、
「揃いのお茶碗」というワードや、「うん」としか言わないのにコミュニケーションが成立している(結局のところの)二人の仲の良さだとか、そういうのをベースにした歌詞の内容になっています。

作詞してる期間にトイレに置いて読んでた高野文子(さん)の『美しき町』や、その他(「棒がいっぽん」に集録)など、「夫」 や「妻」 ではなく「夫婦」 としての個性をみたときの、特殊さというか独自さというか、おかしみのようなものに惹かれていたんだろうなと思います。

「うん」と云う日

おやすみって言うと 君はうんと云う。なんだそれは。
おはようって言うときも、やっぱりうんと云う。古い話
窓は閉めて寝なよって言うと、もう寝てる なぁ
いいのだけど

立派な日、立派なくつを履いていく 雨上がり
おまつりに行くって言うと にこにことして付いてくる
お盆の宵を歩く二人 「うん」と云う
灯りがともる

(あら、甘い匂いのお店も 通り過ぎてく
まァ、魅惑のお面も見ないで 通り過ぎてく
どこへどこへどこへ どこへ向かうんでしょう)

「和枝さんが亡くなって、金魚鉢をもらっただろう」
ひと掬い、彼女を取り戻しに行くんだよ。
お盆の宵を歩く二人、うなずいて
灯りのなかへ

ほら 尾びれも優雅に 彼女が泳いでる
ほら「掬いに来たんだよ」って、君はうんと云う
もぐる すべる うかぶ すくう 彼女は、夢をおよぐ

おやすみって言うと 君はうんと云う。なんだそれは。
揃いのお茶碗 買った日も 君はうんと云った。古い話

いつのまに買ったカステラを食べ、君は歩く
灯りのそとへ

ほら 尾びれも優雅に 彼女が泳いでる
買ったばかりのおもちゃみたいな、嬉しい重さで
はぐれると良くないから 手をつないで帰る
二人と一匹の金魚、きらきらの闇をおよぐ
もぐる すべる うかぶ 金魚はそっと夢をみる、夢をみる

おやすみって言うと、
おはようって言うと、
「うん」と云う
ただいまとか、おかえりとか、
「うん」と云う。二人と金魚 古い話

追記

この曲は、僕の歌詞に何度か登場している、ゲルニカくんという主人公の、まだゲルニカくんが産まれる以前のその両親の話です。ゲルニカくんの口癖 “Hai” に対するかたちで「うん」しか言わないお母さんが出てきました。(蛇足ですが、夫は夏目漱石のイメージです。)
ゲルニカくん初出は『Mrs.Purple Rain』という、これもまた啓ちゃん作曲の曲です。